子どもの表現は、環境から与えられるものが多いといえます。
自分が生きる中で体験したものから表現につながるのです。

例えば、アトリエの幼稚園クラスの年代の生徒に、クリスマスツリーの絵を描こうと提案したとします。
まず、描くにはクリスマスツリーを知らなければ形を表すことはできません。
描く前にツリーの写真を見せたり、クリスマスツリーについてお話することによりある程度は形をあらわせます。


しかし、クリスマスツリーの他に何を描こうか、どんなものを描こうかと問いかけると、体験している子は様々なクリスマスモチーフを知っているのでプレゼントの箱、サンタクロース、星、トナカイやソリなどをどんどん描いていきます。
キリスト教の幼稚園に通う生徒は十字架やイエス・キリスト、マリア様や馬小屋、博士などを描く様子もみられています。
日常の何気ない環境から感じたこと身につけたことが、このようなときに発揮されるのですね。
以前のことです。
お家がお寺のお子様が、「うちにはクリスマスは来ないんだよ」とお話してくださって、環境というものは侮れないなと感じたことがあります。
なんとなく年末の風物詩のようになっている日本では、クリスマスが宗教行事であることが薄らいでいますよね。
もちろんその子のお家にはサンタクロースも来ないので、普通の日常なのだそうです。
子どもの何気ない一言で色々と気づきがありました。

話を戻します。
もっと小さい基礎造形クラスの年代では、そういった表現ではなくそのときに自分が描けるものを描く場合が多く見られます。
例えば、クリスマスツリーを描いているのに画用紙の余白にチューリップを描くというようなことです。
具象的なものを描けるようになると季節など関係なしに描きたいものを描きたくなるのがこの頃の特徴といえます。
小さい子供の絵には必ずチューリップやデイジーのような放射状に花びらがある花や太陽と言うようにシンボリックな形が描かれていますね。
どの花を描いても同じような茎と葉っぱ。
このような時代を経て、段々と表現が進化していきます。
大人に教え込まれなくても、環境が子どもを導いてくれます。
多くのものを見せ、体験させてください。
実体験でなくても絵本や映像でも良いでしょう。
表現豊かであれと願うのであれば、やはり環境を整えることが一番重要であると考えるのです。

ご参考までに、「アナと雪の女王」(2014年3月日本公開)までは、子どもたちの描く雪だるまは2段のものでしたが、公開後に描いた雪だるまは、ほぼ3段のものでした。(アトリエ調べ)
これも環境の変化、体験による変化の一つと言えるでしょう。
本当に顕著だったので鮮明に覚えています。

今まで多くのママたちとやり取りしてきました。
子ども一人ひとりが置かれている環境が異なるので、やはりその子にあった方法や寄り添い方があります。
ママと一緒にアート講座や年少基礎造形クラスは、子どもたちの制作に寄り添うだけではなく、ママたちの相談に耳を傾け一緒に解決策を練っています。
もちろんどのクラスに在籍しているお子様のママたちともコミュニケーション大切に活動しています。
当アトリエはそのようなコミュニティとなっています。