3才児女の子 丸が描けるようになると丸を駆使して図式的な絵がかけるようになる。パンダと人の顔、右下は花を表している。

スクリブルと言われる殴り描きからどのように具象的な絵が描けるように進んでいくのでしょうか。
この道筋をママが理解していると、子どもの絵を見る楽しみが増えることでしょう。

ローエンフェルドは、次のような道筋で絵画の発達段階を述べています。
2歳・・・なぐりがきの段階
      1,未分化のなぐり描き(無秩序)
      2,経線なぐり描き(縦横の線)
      3,円形なぐり描き
3歳・・・    4,言語による注釈がはじまる (命名期。意味付けを行う)
4歳・・・様式化前の段階(前図式期)
絵と思考と現実との間に関係を求めて、形態象徴、色彩象徴を耐えず変化させる。
象徴的に図式化して表現する最初の段階。
記号として図式的に描く。

これから先の年代も更に発達段階は進みます。
リアリズムに目覚め始めるのは10歳頃。
だんだんと写実様式に目覚めていくといわれています。
アトリエで今まで子どもたちの様子を見て来た経験から、必ずしも皆が全員写実様式に目覚める時期が10歳とは限らないといえます。
もっと早い時期に目覚める子もいます。
現代の子どもたちが見ているもの、感じるものが昔とは異なっていること、刺激の強弱が昔とは比べ物にならない環境などが考えられます。
私のアトリエの子どもたちを見てきて言えるのですが、目覚める時期の幅がかなりあるということです。
何かを見て描くことがとても好きな子は一定数おり、段々と緻密に正確に描けるようになっていきます。

小学4年生(10歳)観察しながら緻密に描けるようになる


スクリブルについての研究を行ったローダケロッグは、殴り描きの多様化を保証しなければ次の「図式化」が不充分になると述べています。
多様な殴り描きを行うことで多様なイメージを想像することに繋がるのです。
殴り描きから図式的表現(知的リアリズム)への移行は、2歳の終わりから3歳半をめどにしています。
したがってアトリエでも、親子クラス・基礎造形クラスでは、なるべく多くの自由な殴り描きを家庭でもしていただくようお話しています。
発達段階にそって働きかけを行うことが、先々の移行段階へスムーズに進めるわけです。
発達段階にきていないことをさせてできないことを「なぜできない」と言うことだけは避けていただきたいと考えます。
個人差のあることですから、年齢にこだわりすぎないようにしたいものです。
発達が緩やかなお子さんもいます。
緩やかな場合は、やるべき年代にやれていたか、充分体験をしてきたかを振り返ってみることも必要です。
自由に無秩序に描くことをしてこなかった場合は、やはり図式が不充分になりがちです。
結局その時代にやってこなかったつけは次の段階や先々で現れてしまうこともあるのですね。

アトリエでは、現在【ママと一緒にアート講座(2才児未就園児向け)】【プレ基礎造形講座(来春入園予定の3才児】の募集をしています。
色々なお話を交えながら親子で制作の時間にしたいと考えています。
お問い合わせは問い合わせフォームからお願いいたします。

V.ローウェンフェルド
アメリカの教育心理学者。
日本では1963年に「美術による人間形成」として出版された本が有名。
アメリカでは彼の研究から出版された本はアート教育における最も影響力の強い教科書となった。 

ローダ ケロッグ
アメリカの心理学者。
スクリブル研究で有名。
30カ国以上の幼児の絵を分析し、幼児の描画の発達について検証した。

参考文献等
『美術による人間形成 創造的発達と精神的発達』V.ローウェンフェルド著 竹内清 堀之内敏 
武井勝雄 訳 翠明書房
『児童画の発達過程』ローダケロッグ著 深田尚彦訳 翠明書房