「効率」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」が重視される現代。
習い事でも「いかに早く、手軽に上達するか」が求められることが増えました。
ですが、私たちのアトリエでは、あえて「時間がかかっても、自分の力でやり遂げるプロセス」を何よりも大切にしています。
今回は、これまでの指導者人生の中でも特に深く心に残っている、ある男の子(M君)のエピソードをご紹介します。
■ なぜ、アトリエで「自分で本を見ながら折る」活動をするのか?
アトリエでは、小学校に上がる前までに「折り紙の本を見ながら、自力でおる」ことを目標とした活動があります。
「習い事なのだから、先生が折り方を手とり足とり教えるべきでは?」と思われるかもしれません。
幼稚園や一般的な教室では、先生が一緒におったり教えたりしながら完成を目指すことが多いでしょう。
ですが、アトリエでの折り紙活動は目的が根本的に異なります。
最大の目的は、「自分の力でやり遂げる体験」を通して、根気強さと自己肯定感を育むこと。
そのために、私は園児でも理解しやすい折り紙本の選定を行い、子どもたちが「どこで躓き、どこまで理解しているか」を一人ひとり丁寧に見極めながら寄り添います。
この方法は一見、とても時間がかかります。 ですが、ただ折れるようになるだけでなく、
- 図の見方や本(資料)の扱い方を体得する力
- 壁にぶつかっても諦めない耐性
- 「自分でできた!」という揺るぎない自信
という、一生ものの土台が身につくのです。

■ 毎回お稽古で泣いていたM君のドラマ
今でも忘れられないM君。
彼は折り紙がとにかく苦手で、初期の頃はお稽古のたびに泣いていました。
あまりにも辛そうで気の毒になり、「そんなに泣くほど嫌なら、無理にお稽古を続けなくても……」と、お母様に「辞めることも選択肢です」とお伝えしたこともありました。
ですが、M君のお母様のお返事は違いました。
「アトリエは辞めさせません。ここがこの子の頑張りどころだと思うから」
そうおっしゃり、お母様は2ヶ月ほどレッスンに同席されました。
アトリエでは「どこで躓いているか」を細かく分析してお母様にお伝えし、ご家庭での寄り添い方についても丁寧にお話ししました。
そして、ご家庭とアトリエで根気よく見守り続けた、ある日のこと。
たった一度、「自分の力で最後まで折れた」という小さな成功体験が訪れました。
その日を境界線として、M君は泣かずに折り紙に向き合えるようになったのです。

■ 偉業達成と、「タイパ最高」の本当の意味
ここからのM君の勢いは、驚くべきものでした。
なんと、グループの中で誰よりも早く1冊の本をやり遂げてしまったのです。
そのまま次のレベルの本、さらに次のレベルの本へと進み、小学校入学前に次々とクリアしていきました。
実はこの記録は、アトリエの20年の歴史の中でもいまだに破られていません。
弱点を強みに変え、幼稚園では「折り紙博士」と呼ばれるようになったM君。
何事にも自信を持ってチャレンジする姿へと、大きく成長を遂げました。
一見すると、寄り添う側も根気がいり、焦ったくコスパも悪く思える時間かもしれません。
ですが、子どもの人生という長い時間を思えば、この1〜3年の間に手に入れた「自分はできる」という絶対的な自己肯定感は、何物にも代えがたい宝物です。
回り道に見えて、これこそが最も豊かな、本質の「タイパ・コスパ」だったのだと確信しています。
■ おわりに
アトリエでの私の役割は、折り方を手取り足取り教える「先生(ティチャー)」ではありません。
子どもが自分の力で壁を乗り越えられるよう、見守り、導く「メンター(伴走者)」でありたいと考えています。
子どもには、自ら飛躍的に成長する時期が必ず訪れます。
芽が出るまでの芽吹きを焦らず、根気よく寄り添っていれば、必ず大きな花を咲かせる時が来ます。
子どものアトリエSalon de andy-zは、一人ひとりの「つまずき」も愛おしい成長の証として受け止め、ご家庭とともにその芽を大切に育ててまいります。
